そうだ、馬が好きならドーヴィルへ行こう!

そうだ、馬が好きならドーヴィルへ行こう!

ドーヴィル競馬場にやってきた

 

ドーヴィルの競馬場でサラブレッドを見て感動した

※当記事は『地球の歩き方リヨン特派員ブログ』から転載したものです

 

ドーヴィル観光局のステファンさんのお誘いで、リヨンからパリを経由してイギリス海峡の海辺の町ドーヴィルへやってきた。ドーヴィルはクロード・ルルーシュ監督作品『男と女』(1966年)のロケ地となった場所で、フランス映画ファンの巡礼地でもある。長年、憧れていた場所だったので、念願が叶ったドーヴィルプチ旅行! しばしコロナ禍であることを忘れることができた。

 

海辺に沿って板張りの遊歩道を歩き終えると、ステファンさんがいつものニコニコ顔で「さあ、これからとっておきの場所に案内するよ、オニヴァ(訳:行くよ)」と号令をかけた。お馴染みの号令に、みんな笑顔を交わし合って「OK」と大きな声で返事をした、子供の遠足のように、ステファンさんのあとについて歩き始めた。

 

どこへ行くのか気になり、ステファンさんに尋ねると、

 

ステファン:マダムユキはきっと気に入るよ
マダムユキ:え~、気になるなあ、どこに行くの?
ステファン:ドーヴィルの領主モルニィ公が建設した場所だよ、教会よりも先にね
マダムユキ:ドーヴィル競馬場だ!
ステファン:そのとおり、マダムユキは競馬ファンだろう

 

日本に住んでいた頃、競馬に夢中だった。正確にいえば、サラブレッドに夢中だった。筋肉質のボディとスリムに伸びた四肢、しなやかな脚の動きで疾走するサラブレッドの神がかった美しさ。それが見たくて、競馬場に足を運び、お気に入りの馬と騎手に大声でエールをお送り、レースの勝敗に一喜一憂していた。そういえば、しばらくサラブレッドを見ていない。

 

▼途中で見かけたサラブレッドの彫刻オブジェ

 

小雨が舞ったり、止んだりするなか、海岸から15分ほど歩くと、長く続く1本道の通りに入り、しばらくすると競馬場の入口が現れた。「東京競馬場とは雰囲気が違う」と日本語でつぶやくと、ステファンさんが「なにか言った?」と反応したので、「おしゃれなところですね」ってフランス語で答えた。「ねえ、そうだろう」って、ほめられた子供のように満面の笑みを浮かべるステファンさん。

 

▼ドーヴィル競馬場の入口

 

ドーヴィル競馬場の営業主任のエリックさんが私たちを迎え入れ、まず、競馬場の本棟に案内してくれた。19世紀に流行ったエンパイアスタイル(帝政様式)を彷彿させる、シンプルでありながらも重厚感と均衡のとれた落ち着きのあるファサードの建物だ。この建物の向こう側に本馬場が広がっている。

 

▼ドーヴィル競馬場本棟

 

森林に恵まれたノルマンディ地方だけあって、内装に木材が豊富に使われていた。
入口右手のスペースは「トリビューヌの間」と呼ばれ、ジョッキー(騎手)のユニフォーム(勝負服)のデザイン画が壁を飾り、重厚感のあるカフェの木製カウンターや勝馬投票券販売窓口の木製ボックスが、創業当時の姿のまま残されている。レースのある日、馬券を握りしめ、壁にかけられた画面をにらみ観戦する人たちでにぎわう様子が目に浮かぶ。レースがない日はカクテルパーティルームとして貸切で利用することができるとのこと。場内馬券売り場とは思えない、ベルエポックの古きよき時代の趣きが漂う、とってもおしゃれな空間だ。

 

▼トリビューヌの間(Salle des Tribunes

 

エリックさんが「密を避けるためにエレベーターは利用せずに階段で3階までのぼるよ」といって、入口横の階段をのぼり始めたので、慌ててあとを追って、息を切らしながら最上階の3階までのぼり終えた。そこに、一面ガラス張りのレストランがあり、馬場を一望するすばらしい景色が現れた。「うお~」とみんな一斉に感嘆の声を発してガラス窓に走り寄りった。なんというサプライズだろう。

 

「エリックさん、ここはVIP専用レストランですね」と興奮しながら尋ねると、「ちがうよ、予約をすれば誰でも利用できるよ」。「食事をしながらレース観戦できるなって最高です!」「レストランの下が観戦席だからね」

 

すると、横からウクライナ出身でカンヌで旅行会社を経営しているイェウヘンさんが、「ぼくのお客さんにプライベートレースとランチをオーガナイズしたいんだけど、そんなことできる?」と興味津々な顔つきで登場。エリックさんが「もちろんだよ、プライベートレースで人気ジョッキーの騎乗を希望する場合は早めにスケジュールをおさえる必要があるけどね」。夢のような話が繰り広げられていた。

 

▼馬場を一望するレストラン

 

ドーヴィル競馬場はドーヴィルの領主モルニィ公によって建設され、18648月に最初のレースが開催された。日本は幕末で3年後に大政奉還が行われたという時代にドーヴィルでは、夏の避暑地としてやってきたパリの上流階級の人たちが、優雅に競馬を楽しんでいたということだ。

 

現在、ドーヴィル競馬場では、ジャン・プラ賞、ロートシルト賞、モーリス・ド・ギース賞(あるいはモーリス・ド・ゲスト賞)、ジャック・ル・マロワ賞、モルニィ賞、ジャンロマネ賞の6つのG1レースが開催されている。なかでもジャック・ル・マロワ賞は芝1600mの直線コースのレースで、ムーラン・ド・ロンシャン賞と並びフランスのマイル戦の最高峰レースだ。1998年に岡部幸雄騎士が手綱をとったタイキシャトルが優勝したことは記憶に新しい。また、モーリス・ド・ギース賞は芝1300mのコースで、パリ・ロンシャン競馬場で開催されるアベイ・ド・ロンシャン賞と並ぶフランス短距離路線の最高峰レース。こちらも、1998年に武豊騎手のシーキングザパールがコースレコードで優勝した。

 

ドーヴィル競馬場の主なコースとして、一周2200mで直線450mの右回り芝コース、直線1600mの芝コース、ファイバーサンドのオールウェザーコースがある。

 

写真をご覧いただきたい。

手前が芝コースだ。馬場は平たんで、青々と茂った芝は弾力に富んでいるのがおわかりいただけるだろう。

「平坦性を保つための芝の手入れは費用もかかるたいへんな作業です。最高の走りを保証するために芝管理はとても重要で、ドーヴィルの競馬場が最も力をいれている点です」と熱く語るエリックさん。

 

その芝コースの内側にファイバーサンドを使用したオールウェザーが見える。2003年に導入されたオールウェザーコースのおかげで芝コースが使用できなくなる冬季でもレースを開催することができるようになった。また、競走馬のトレーニングにも使用される。

 

中央に見えるのがポロ競技場だ。1950年からクープ・ドール(黄金杯)が開催され、世界中から有名なプレーヤーがドーヴィルに集まり、熱戦が繰り広げられている。2021年のクープ・ドールは816日から29日に開催される

 

▼レストランから本馬場の眺め

 

▼ドーヴィル競馬場は年間を通じてレースが開催されている

 

エリックさんが、パドック(本馬場に向かう前に出走馬が一周する場所)の横を抜けて、ノルマンディー地方固有の瓦屋根にティンバーフレーミング(フランス語でコロンバージュ)と呼ばれる木組みの建物に案内してくれた。検量室、更衣室、関係者控え室などに使用されている建物だ。

 

▼関係者控え室のある建物

 

建物内に入って驚いたのが木材を使用した見事な天井だ。まるで船底を見ているようだ。

 

▼木板が敷き詰められた天井

 

騎手控え室と検量室を見学した。通常、関係者以外は入れない場所だ。ドーヴィル競馬場では女性騎手も活躍しているとのこと。検量はレース前の前検量とレース後の後検量が行われ、デジタル計量秤が使用されている。ちなみに検量だが、結果によっては失格となるため、緊張した雰囲気のなかで行われるとても重要なプロセスなのだ。

 

▼関係者(騎手・調教師・厩務員など)控え室

 

続いてエリックさんが装鞍所を案内してくれた。装鞍所は出走馬の馬体、蹄鉄、馬の健康状態を検査する場所だ。馬体重の測定も行われる。装鞍所を取り囲む建物は馬房で、検査後の出走馬は馬房に収容され、水や肥料、禁止薬物が与えられないように監視される。

 

▼装鞍所

 

▼馬房

 

エリックさんがていねいに説明している間、ときどき抜け出して写真を撮るマダムユキ。それを見逃さないステファンさん。「ごめん、ごめん」といって駆け寄るマダムユキ。

 

▼ステファンさん、ごめん、ごめん

 

ドーヴィル競馬所には調教センター(トレーニングセンター)が設置されている。内馬場の調教用トラックが使用され、著名な調教師が馬房を借りてトップホースを養成していることで知られている。競馬場内の厩舎では馬と寝泊まりをともにする調教師もいるそうだ。

 

▼厩舎

 

ドーヴィルは競馬場だけでなく、サラブレッドオークションの開催地としても世界に名を広めている。最初に開催されたのは1887年。現在、アルカナ社がオークションをオーガナイズしているが、オークションの売上げ実績は欧州第2位を誇り、フランス競走馬流通市場の一大拠点となっている。毎年8月に世界各国から一流馬がドーヴィルに集結し、なかでも1歳馬セールはG1を制したトップブリーダーによる選りすぐりの1歳馬が揃うことで有名。2021年は814日から16日まで開催されるので、馬主になるチャンスをお見逃しなく。

 

見学を終えて、エリックさんが馬との交流の時間を設けてくれた。馬の鼻筋に触れ、言葉を交わし、コロナ禍を忘れて心が和むひとときを過ごすことができた。エリックさん、ステファンさん、すてきな時間をありがとう!

 

▼潤った目で遠くを見つめる「優駿」

 

 


【基本情報】
▶ HIPPODROME DE DEAUVILLE-LA TOUQUES(ドーヴィル-ラ・トゥク競馬場)
・住所: 45 Avenue Hocquart de Turtot - 14800 Deauville France
・電話: +33 2 31 14 20 00
・URL: https://www.france-galop.com/en/hippodromedeauville

 

次回は、「ドーヴィル フランシスコ会女子修道院リニューアルオープン」をお届けしたい。お楽しみに。

マダムユキより

 

文・写真:マダムユキ(著作権保護により無断複写・複製は禁じられています)

 

 

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