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サン・マルタン・デネ教会

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サン・マルタン・デネ教会
BASILIQUE SAINT-MARTIN D'AINAY


住所:11 rue Bourgelat 69002 Lyon France
電話番号:+33 4 72 40 02 50
開館時間:月曜日~金曜日:09時~1130分、1430分~1830分、土曜日:0930分~1145分、日曜日:09時~1230

最寄り駅:地下鉄A線 アンペール・ヴィクトル・ユーゴ(Ampère Victor Hugo

 

「ロマネスク」という言葉、なんて美しい響きではないか。「ロマン(浪漫)」や「ロマンス」を連想させ、頭のなかでリフレインする。 

「ロマネスク」に対して「ゴシック」という言葉がある。語源からすれば、前者は「ローマ風」、後者は「ゴート風(ゴートとは古代ゲルマン民族を指す)」の意味で、いずれも中世の美術様式を示す言葉として使われる。時代の流れからすれば、「ロマネスク」はおよそ11世紀から12世紀半ば頃、「ゴシック」は12世紀半ば頃から15~16世紀、そして14~16世紀にイタリアで始まった「ルネサンス」へと続く。時代区分はあくまでも便宜上で、それぞれの様式は重なりあって建築様式は変化する。 

「ロマネスク建築」は地方色豊かな多様性に富むが、共通した特徴として、幾何学的フォルム(壁や床などの平面、円柱や丸天井などの曲面)、重厚感(厚い壁、太い柱)、限られた開口部(小さな窓)などがあげられる。また、近代建築の巨匠「ル・コルビュジエ」に共通する光と影の対比が生み出す「空間演出」がすばらしい。一方「ゴシック建築」といえば、「天に届け」といわんばかりの建造物の高さを追求し、豪華な彫刻芸術や、大きな開口部から差し込む光によってきらびやかに輝く色彩豊かなステンドガラスなどが共通してみられる特徴である。 

ところで、リヨンはローマ帝国のガリア属州の植民都市として、紀元前43年にルグドゥヌム(Lugdunum)という名で誕生した。2世紀頃から、ローマからの伝道師たちによってキリスト教が布教し、177年にリヨン最初の司教ポティヌスが殉教するなど、フランスのキリスト教史においてリヨンは古い歴史をもつ。そのリヨンで、ソーヌ川とローヌ川に挟まれた中州(プレスキル)のエネ(AINAY)と呼ばれる地区に、リヨン最古の教会「サン・マルタン・デネ教会(Basilique Saint Martin d'Ainay)」がある。古文書によれば、創設は5世紀に遡り、11世紀後半から12世紀前半にかけて大きな改修工事が施され、ロマネスク様式の修道院が建設された。13世紀に入って、殉教者に捧げる教会として多くの巡礼者が訪れ、名声とともに発展していく。しかし16世紀に広がった宗教戦争によりサン・マルタン・デネ教会は大きな損傷を被り、18世紀のフランス革命の時代から1807年まで、教会は肥料倉庫として利用された。教会建物の劣化が進み、破損状態が極めてひどく、教会を取り壊すことが検討された。地元住民を中心に歴史遺産の保護と継承のために修復の声が高まり、「バジリカ様式(身廊と側廊をもつ長方形の建物)」と「ネオロマネスク様式」が融合した現在の姿に再建された。「ネオロマネスク様式」は「ロマネスク・リヴァイヴァル建築」とも呼ばれ、11世紀から12世紀のロマネスク様式から着想を得た建築様式で、19世紀後半からアメリカ合衆国の大学や教会などに広く採用されている。 

サン・マルタン・デネ教会を前に、正面ファサードの幾何学的な美しさに魅了されるだろう。左右対称の構成で、中央にそびえる鐘楼の頂上にピラミッドが置かれ、その四隅を飾る三角錐がチャーミングな印象を与えている。また、半円アーチの開口部、壁に帯状に広がる彫刻装飾やレンガを埋め込んだ菱形模様が、平らなファサード平面にリズミカルな躍動感を与え、何度見ても飽きることがない。

後方に廻ってみよう。ロマネスク教会の美しさは、その「後ろ姿」にある。教会の中央交差部に聳え立つ角塔を、高さの異なる立方体の構造物が階段状に取り囲み、最後方に置かれた後陣(アプス)の半円柱の構造物によって直線を曲線で締めくくり、二次元においても三次元においても完璧なまでに幾何学美を追及している。こうして、教会全体をピラミッドフォルムの立体構造に仕上げて、ずっしりとした安定感と重量感が実現されるのだ。

内部は、山寺へ続く杉並木の参道を歩くように、太い円柱が連なる身廊を通って内陣へと導かれる。後陣(アプス)の半球面の天井(1855年完成、フランドラン(H.Flandrin)作)や中央交差部の丸天井には、金を主調とした見事なモザイク画が施され、身廊にそびえる半円形の天井やアーチ部には、幾何学模様のフレスコ画が施されている。さらに、内陣に吊るされた巨大なシャンデリアと、異国情緒を漂わせる天井のモザイク画が神秘的な内部空間を創造する。

ロマネスク教会といえば、個性豊かな柱頭彫刻を忘れてはならない。彫刻モチーフは、聖書のエピソードであったり空想の動物(怪物)や人物であったりさまざまだ。柱頭の限られたスペースに彫刻家の想像力と職人芸がうかがえる。サン・マルタン・デネ教会は、残念ながら現存する柱頭彫刻が限られてしまうが、内陣の南北を飾る柱に『アベルを殺すカイン』や『アダムとイヴ』をモチーフにしたすばらしい彫刻が残されている。登場人物のプリミティブでありながらも豊かな感情表現が訪問者の目を楽しませてくれる。


文・写真:マダムユキ


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