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老舗DELASの直営ショップ(タン・レルミタージュ)

老舗DELASの直営ショップ(タン・レルミタージュ)

老舗DELASの直営ショップ

 

フランスリヨンからローヌ川に沿って車で1時間ほど南下したところのローヌ川沿いにタン・レルミタージュ(Tain-l’Hermitage)という町がある。小さな町なのだが、ローヌワインの名門ワイナリー、1834年創業の「ポール・ジャブレ・エネ(Paul Jaboulet Ainé)」と1808年創業の「M.シャプティエ(M. Chapoutier)」が本店を構え、北ローヌワインのメッカとして世界各国のワイン愛好家の注目を集めている。また、町の西側にローヌ川が大河のごとくゆったり流れ、東側に最高級ローヌワインを生み出す伝説のエルミタージュの丘が広がり、この風光明媚な景色に観光客の足も絶たない。

このタン・レルミタージュに1835年創業の歴史と由緒あるワイナリー『メゾン・ドゥラス・フレール(Maison DELAS Frères)』が直営ワインショップをオープンさせたときいて、早速、訪問してみた。

 

▼DELASの家紋(ボトルに刻まれている)

 

本題に入る前にまず、ローヌワインのちょっとした豆知識から。

【ローヌワインは北と南で個性が異なる】

「太陽のワイン」と呼ばれ日本でも人気を高めている「ローヌワイン」は、スイスのレマン湖からリヨンを経由して地中海へと注ぐローヌ川の流域に広がるぶどう畑から生まれる。ローヌ川流域でのワイン造りの歴史は古く、古代ローマ帝国の時代に遡る。丘陵にテラス状にぶどう畑を耕すのはローマ人の知恵で、2000年前の石垣やその形跡が今でも残されていて大変興味深い。さて、ローヌワインと一口にいっても、、北と南ではテロワール(気象条件、土壌、地形などブドウの栽培に影響を与える自然環境)や使用するぶどう品種が異なり、ワインの個性も大きく違う。 

【ローヌ北部の特徴】

ローヌ北部は「セプタントリオナル(Septentrionale)」と呼ばれ、ヴィエンヌからヴァランスまでのローヌ川流域の右岸と左岸にぶどう畑が広がっている。夏は暑く、冬は冷え込み寒暖の差が激しい大陸性気候に属する。土壌は、ローヌ川右岸では花崗岩質(グラニット)や片岩質(シスト)や片麻岩質(グネイス)などがみられ、左岸では、沖積土壌もあれば、花崗岩質、粘土石灰岩質や砂利の土壌など多岐にわたる。赤ワイン用に栽培されるぶどう品種はシラー種、白ワインはヴィオニエ種、ルーサンヌ種、マルサンヌ種が主要品種だ。

ローヌ北部のアペラシオン(AOC)は、「コート・ロティ(Côte-Rôtie)」「シャトー・グリエ(Château-Grillet)」「コンドリュー(Condrieu)」「サン・ジョゼフ(Saint-Joseph)」「エルミタージュ(Hermitage)」「クローズ・エルミタージュ(Crozes-Hermitage)」「コルナス(Cornas)」「サン・ペレ(Saint-Péray)」の8つ。 

ローヌ南部のワインについては次の機会に譲ろう。 

【メゾン・ドゥラス・フレール(Maison Delas Frères)の歴史】

1835年、シャルル・オーディベール(Charles AUDIBERT)さんと、フィリップ・ドゥラス(Philippe DELAS)さんの2人が、タン・レルミタージュの対岸にあるトゥルノン・シュル・ローヌ(Tournon-sur-Saône)にワイン商「オーディベール&ドゥラス」を創立したのがメゾンの歴史のはじまり。ドゥラスさんにはエンリとフロレンタンという二人の息子がいて、オーディベールさんの二人の娘さんとぞれぞれ結婚することになり、オーディベール家とドゥラス家は血縁関係でよりいっそう絆を強めた。1924年、エンリとフロレンタン兄弟が父および義父が創立したメゾンを引き継ぎ、「ドゥラス・フレール」と改名する。フレール(frères)とはフランス語で兄弟という意味だ。ドゥラス兄弟はエルミタージュやシャトー・ヌフ・デュ・パプといった銘醸地のぶどう畑を購入し、ワインの自家醸造に力を入れ、自家製ワインの質を恒常的に高めていく。戦後の1945年以降、メゾン・ドゥラス・フレールの名がワインメーカーとしても、ネゴシアンとしても、世界中に広まっていった。1960年代に入り、3代目のミシェルがネゴシアンとしての鋭敏を発揮し、輸入業をさらに発展させ、北ローヌワインの主要メゾンの一つとして確固たる地位を築いた。1977年、1837年創業の高級シャンパーニュ・メゾンのドゥーツ(Maison Deutz)の資本・技術提携により、ドゥラスのワイン生産拠点をトゥルノン・シュル・ローヌから隣り町のサン・ジャン・ド・ミュゾル(Saint-Jean-de Musols)へ移転。1993年、最高級シャンパンメゾンのルイ・ロデレールのオーナーであるルゾー家(Rouzaud)が、メゾン・ドゥラス・フレールとメゾン・ドゥーツの提携を強化し、1996年、ふたつのメゾンの経営・営業拠点をアイ村のメゾン・ドゥーツに集中させ、ファブリス・ロッセ(Fabrice Rosset)氏が社長に就任した。2006年、メゾン・ドゥラス・フレールはアペラシオン「クローズ・エルミタージュ」のぶどう畑を購入し、メゾン所有のぶどう畑を拡大させる。2015年、メゾン創業180周年を記念して、北ローヌワインの首都タン・レルミタージュの不動産を購入し、近代的な醸造所の新設が計画された。およそ1800万ユーロ(約2億2500万円)を投資し、5年の歳月をかけて工事が行われ、2020年、ワイナリー(醸造所)、ゲストハウス(宿泊所)、直営ショップがオープンしたというわけだ。 

【VIP、取引先、提携先をもてなす空間】

瀟洒な邸宅を改装。インテリアを担当したのは、インテリアデザイナーのジュリア・ルゾー(Julia Rouzaud)氏が、華美な装飾を避け、柔らかい色遣いで寛ぎの空間を演出する。11部屋、ダイニング、バー、ミーティングルーム(ツイン・ダブル)、厨房、地下セラーを完備する。

 

▼ゲストハウス

▼エントランスホール

▼ダイニング

▼バーラウンジ

▼ミーティングルーム

▼客室

▼バスルーム

▼セラー

 

【波打つワイナリー】

ローヌ渓谷のテラス状に広がるぶどう畑を彷彿とさせる段々に波打つ壁をもつワイナリーを設計したのは、ハーバード大学とイェール建築大学院を卒業した建築家Carl Fredrik Svenstedt氏だ。超近代的設備を備えた醸造所の建物は、石(南仏プロヴァンスのリュベロン地方の石)、ガラス、鉄、木といった建築素材が織りなす芸術作品となり、訪問者の目を惹きつけてやまない。ワイナリ―内部は、石造りの湾曲した壁に沿って、スローブした廊下を歩きながら、醸造過程をガラス越しに見学できる。屋上のテラスからは、エルミタージュの丘への美しい眺めも楽しめる。

 

▼中庭からみた醸造所

▼波打つ壁

▼建物内部(波打つ壁)

▼醗酵庫

▼熟成庫

 

【ワインへの愛を共有する場】

テイスティングカウンターのある直営ブティックは、「ピュアな空間」の一言につきる。すっとのびた長方形の空間に心が洗われ、すべてが洗浄されて、最高級ワインを体に受け入れる準備が瞬時に整う。

▼ワインショップ入口

▼ワインショップ内観

 

人口6千人の小さな町に世界中からの訪問客を迎える場所がまたひとつ増えた。安全・安心して海外旅行ができる日が来たら、是非、訪問してほしい。

 

【MAISON DELAS FRERES】
・住所:40 rue Jules Nadi – 26600 Tain-l’Hermitage France

・電話:+33 (0)4 75 08 92 97
・サイト:www.delas.com
・営業日:月曜日~金曜日 09:30-12:30、14:30-18:30
・休業日:日曜日、フランスの祝日
・最寄り駅:SNCF駅「TAIN L’HERMITAGE」下車、徒歩5分

・メゾンの主要ワイン:コート・ロティ(赤)、コンドリュー(白)、サン・ジョセフ(赤、白)、エルミタージュ(赤、白)、クローズ・エルミタージュ(赤、白)、コルナス(赤)、ジゴンダス(赤)、タヴェル(ロゼ)、コートデュローヌ(赤、白)、シャトーヌフデュパプ(赤)、ヴァケラス(赤) 

 

文・写真:マダムユキ(著作権保護から無断複写・複製は禁じられています)


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